今では、様々なレトリック、
いわゆる文章の表現技法があります。

そして、今回 取り上げるのが
「倒置法」という表現技法です。

この倒置法を使う事によって
文の印象をガラリと変えたり、
意外性を出せたりできますので
よろしければこの先の内容を
参考にしてみてくださいね

変える

倒置法とは?

まず初めに、倒置法の意味について
解説したいと思いますね

とはいえ、別に難しい技法ではなく
単に、文中の言葉を入れ替えるだけです。

例えば、下の文を、

昨日 焼肉を食べた。

下のように、「焼肉を」と「食べた」の
順番を入れ替えるのが倒置法になります。

昨日 食べた。焼肉を

ただし、

下のように、「昨日、」と「焼肉を」の
順番を変えても倒置法とは言えません。

焼肉を昨日 食べた。

というのも、単に入れ替えるだけでなく
文として普通とは違う順番にする、
そういった入れ替え方にしないと
倒置法を使った事にはならないからです。

まず、そもそもの話として
日本語における文と言うのは
述語が最後にくるのが普通となってます。

最後

先ほど例文で言えば「食べた」が述語です。

なので、普通の文をでないようにするには
最後にある「食べた」を
別のところに持っていく必要があるので、

昨日 食べた、焼肉を

こっちしか倒置法にならないんですね

ちなみに、「食べた」の順番さえ
変えてしまえばいいので
下の文でも倒置法の文となります。

焼肉を食べた、昨日。

基本的に述語が最後にならなければいいので
他の言葉に関しては自由に変えてOKです。

ちなみに、倒置法と似た技法として
体言止めがありますが
これらは全くの別物ですからね

倒置法と体言止めの違いについて

構造的な違い

では、倒置法と体言止めの違いは何なのか?

単純に、文の構造的な話だけで言うなら
倒置法の文は名詞などの体言で終わらないが
体言止めは名詞などの体言で終わる、

これが違いとなります。

実際に、見てもらった方が早いので
下の2つの文をご覧ください。

・倒置法の文
勉強します、国語を。
・体言止めの文
国語を勉強。

「国語を勉強します」という文を
倒置法と体言止めの文に直したものですが
ご覧のように、倒置法の文は
「国語」という名詞でなく
「国語を」で終わっていますが
それに対し、体言止めの文では
「勉強」という名詞で終わってますよね?

このように、技法として
ちょくちょく似ていると言われる、
倒置法と体言止めには
文の最後が名詞か?名詞じゃないか?
そうゆう違いがあるのです。

でも、

ぶっちゃけて言うと、こんな違いなんか
ハッキリ言ってどうでもいいです。

折角、当記事に訪れてくれたあなたには
こんな違いより、もっと本質的な違いを
知っていただきたいです。

「情報量の違い」という本質を…

情報量の違い

先ほど、例文として挙げた
倒置法と体言止めの下記2つの文、

勉強します、国語を。
国語を勉強。

どちらも「国語を勉強します」を
基にした文となっています。

では、多少の違いはありますが
同じ文を基にしているのだから
倒置法も体言止めの文も
全く同じ内容になるでしょうか?

答えは「NO」です。

no

「国語を勉強します」と
倒置法の「勉強します、国語を」は
順番は変わってはいますが
確かに、内容としては全く同じです。

ですが、「国語を勉強します」と
体言止めの「国語を勉強」は
同じ内容ではありません。

だって、「国語を勉強」の文は
「勉強」に対して詳しく書いてないので
「勉強します」「勉強したくない」
「勉強した」「勉強しましょう」と
様々な意味に捉える事ができちゃうので。

要するに、体言止めにすると
「勉強します」が「勉強」になり
「します」の部分が消えてしまうので
文の情報量が減ってしまうんですね

一方、倒置法は単に順番を変えるだけなので
文の情報量自体に変化はありません。

だからこそ、情報量の違いが本質なのです。

違い

倒置法なら情報量は減らないけど、
体言止めだと情報量が減ってしまう、

コレが倒置法と体言止めに対する
本質な違いとなるのです。

じゃあ、順番が変わるだけの倒置法と
情報量が減る体言止め
これらを使う事によって
どんな効果を生み出す事ができるのか?

倒置法の効果については
次の章で解説していきますので
倒置法が気になられるなら
このまま読み進めてください。

一方、体言止めは下の別記事にて
解説をしていますので
そちらをご覧いただければと思います。

倒置法の効果について

印象に残る箇所を変えられる

まず、1つ目の倒置法の効果ですが
それは、「印象に残る箇所を変えられる」
という効果です。

例えば、下の文を、

昨日 うまいと評判の焼肉の店に行った。

下のように倒置法に直した場合、
上の文では特に何も感じなかった、
「焼肉の」の箇所が
読み手の印象に残りやすくなります。

昨日 うまいと評判の店に行った、焼肉の。

実際、順番を変えただけではありますが
上の文より下の文の方が
「焼肉の」という箇所が
強調されていると感じますよね?

このように、倒置法には
強調される部分を変える事ができ、
それによって読み手の印象に残る箇所を
変えられる、という効果があるのです。

変える

では、どうして倒置法に
こんな効果が出るかと言えば
人には「親近効果」があるからです。

最後の部分が印象に残りやすい、
そんな心理効果があるため
倒置法を使って順番を変えると
印象を操作をする事ができるんですね

また、印象に残る箇所を変えられると
下記のような事もできます。

もっと頑張って仕事をしてくださいね
頑張って仕事をしてくださいね、もっと

2文目は1文目を倒置法にしたものですが
1文目と2文目とでは読んだ時に感じる、
印象に差が出ますよね?

1文目は優しく注意されてる感じですが
2文目はきつく注意されてる感じですからね

このように、全く同じ内容の文でも
倒置法を使って順番を変えると
読んだ時に抱く印象に差が出るのです。

稚拙な文章になるのを防ぐ

また、「稚拙な文章になるのを防ぐ」
こういった効果も倒置法にはありますね

例えば、下の文章は末尾を全て
あえて「~ました。」にしたんですが
読んでみると幼稚で稚拙な文章だと
感じるかと思います。

今日は朝から大変になりました。
上司に呼び出されて無理難題を言われました。
だから昼休みも献上して頑張りました。
休憩も取らずに必死に仕事しました。
なんとか終電前には終わりました。

でも、この文章に倒置法の文を入れれば
末尾に変化がでますので
稚拙な文章だと感じにくくなります。

今日は朝から大変になりました。
上司に呼び出されて言われました、無理難題を。
だから昼休みも献上して頑張りました。
休憩も取らずに仕事しました、必死に。
なんとか終電前には終わりました。

以上のように、倒置法の文は
末尾を変化させる事ができるので
稚拙な文章になるのを防げるのです。

1文を区切る事ができる

あと、「1文を区切る事ができる」
なんて効果も倒置法にはありますね

「どうゆうこと?」と思われてるでしょうが
まずは、下の文をご覧ください。

昨日 うまいと評判の焼肉の店に行った。
昨日 うまいと評判の店に行った、焼肉の。

最初の文はごく普通のもので
次の文は最初の文を
倒置法の文に直したものです。

最初の文は、先頭から末尾まで
特に区切られる感じはしないでしょうが
次の倒置法の文は「行った」のところで
文が終わったように感じませんか?

というのも、「述語がきた = 文の終わり」
自分ら日本人の脳には
そうインプットされてるからです。

倒置法とは?」でも説明したように
日本語の文は基本的に
述語が最後にくるようになってます。

そのため、本やTVや漫画でも
文を扱う、ありとあらゆる媒体において
文の最後は述語になる事がほとんどで
そういった文を自分たちは普段から
数多く、見たり・聞いたりしてきました。

その経験が、もはや無意識のうちに
述語がくると文の最後である、
そう認識させてしまうんです。

ですので、述語が最後にならず、
文の途中に入ってくる倒置法は
文の途中で「1文が終わった」、
そう思わせる事ができるのです。

終わり

…とはいえ、

「倒置法で、文が区切ってるように
 感じさせたところで意味があるのか?」

こんな事を感じてるかもしれませんね

確かに、何も考えずに文を区切るだけでは
コレと言った効果は発揮しませんが
この「区切る」という倒置法の効果が
有用となる時があるんですよ

なので、次は倒置法を使った
効果的な使い方をした例文を
お見せしたいと思いますね

倒置法で意外性を出す例文

先ほどの「文を区切れる」という効果は
「意外性を出せる」に繋がります。

例えば、こんな例文があったとします。

お宅のお嬢さんをください!

この例文を見れば大抵の方々は
書き手が結婚の許可を貰うために
お相手の家族に言った言葉、
そう思われるでしょう。

でも、上記の例文の後に
こんな事が書いてあったらどうですか?

友達に

「そっちかーい!」と漫才みたいに
ツッコミを入れちゃいますよね?

これが、文を区切る事による
意外性を出せる効果なのです。

驚き

まず、そもそもの話として
「お宅のお嬢さんをください!友達に」は
「友達にお宅のお嬢さんをください!」を
倒置法に直した文となっています。

内容的な部分だけを見れば
「お宅のお嬢さんをください!友達に」も
「友達にお宅のお嬢さんをください!」も
全く同じ内容ではあります。

でも、倒置法を使った文で感じた意外性を
「友達にお宅のお嬢さんをください!」で
感じる事はありません。

じゃあ、どうして内容は全く同じなのに
こういった違いが出てしまうかと言えば
それこそが「文を区切れる」という効果が
倒置法にはあるからです。

「お宅のお嬢さんをください!友達に」を
読んだ読み手というのは
「お宅のお嬢さんをください!」で
一度、文として終わりだと感じます。

そのため、
「お宅のお嬢さんをください!」だけで
文の内容を把握しようとします。

「誰が言ってるか明確に書いてないなら
 書き手がお嬢さんをくださいって
 言ったんだろうな」
こんな感じに。

その結果、本当は友達の話にも関わらず
読み手は勘違いをしてしまうので
意外性を感じさせる事ができるのです。

これが、ごく普通の文である
「友達にお宅のお嬢さんをください!」だと
倒置法の文とは違って
勘違いする事ってありませんよね?

このように、

倒置法で一部の情報を後に持っていき、
文を区切れるようにする事で
読み手に勘違いをさせ、
意外だと感じさせる事ができるのです。

ちなみに、漫才的な使い方だけでなく、

健康によい、タバコは。

こんな感じで、区切った箇所までで
予想する事ができない内容を
後にする事によって
意外性を出す事もできます。

この例文で言うなら
「健康によい」からは予想できない、
「タバコは」を書く感じです。

ただ、順番を変えるだけではありますが
それによって上記の効果が得られますので
うまく倒置法を使ってみてくださいね

ちなみに、意外性を出せると
読者の感情を揺さぶれたりできるので
そういった意味でも効果的です。

ただし、倒置法の文は基本的に邪道です。

普通の文ではありません。

なので、倒置法の文を使い過ぎると
気持ちの悪い文章になっちゃうので
この点は気をつけてくださいね

まとめ

倒置法というのは言葉の順番を変える、
それだけの技法ではありますが
下記の効果を生み出す事ができます。

・印象に残る箇所を変えられる
・稚拙な文章になるのを防ぐ
・1文を区切る事ができる

順番を変えるだけですので
基の文と内容は全く同じですが
上の効果のように読み手が感じる印象を
大きく変える事が可能です。

とはいえ、使い過ぎは厳禁ですけどね

なので、良い文章を書くために
程よく倒置法を使ってみてくださいね

それでは、失礼いたします。